
Artist : 佐藤允 / 画家
1986年千葉県生まれ、現在は東京を拠点に制作。2009年に京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科先端アートコースを卒業。
主なグループ展に「第8回光州ビエンナーレ」(2010)、「ヨコハマトリエンナーレ 2011: OUR MAGIC HOURー世界はどこまで知ることができるか?ー」(2011)、「Inside」 (パレ・ド・トーキョー、2014)、「堂島リバービエンナーレ2019」(2019)などがある。
作品は高橋龍太郎コレクション、ルイ・ヴィトン・マルティエに収蔵されている。
堀内(TH):さっそくだけど、何から話そうか。(佐藤)允くんとは、もうここしばらく、信じられないくらい喋ってる。昨日も、アトリエに到着する数分前でさえもね(笑)。LINE上でやり取りをして、僕らはもう毎日のように会話しているんだよね。
佐藤(AS):だから、どこがどういう……
TH: そう。“ARTIST WARDROBE”に向けても話はしてきたけど、どういう起点で何がどうなって、みたいなことが結構カオス。本当に毎日100件のやり取り。朝吹(真理子)さんと允くんと僕のグループLINEがあって。それが毎日動いてる。気が狂いそうになるって話なんだけど(笑)
AS: 本当に(笑)。なんか人生ってもっと面白いはずなのに、なんで毎日、毎朝、同じ人たちと連絡とってるんだろうって。なんかもし、僕たちだけのもっと秘密のことがいっぱいあって……うまく言えないけど、そういうことが沢山あったりするんだったらまだしも。
TH: この前、共通の知り合いの方がいて、ギャラリーのオープニングのレセプション後のご飯で、何かの話の流れで、毎日、夜も3人でLINEしてるという話でその画面を見せたら……毎日「おはよう」って言い合ってるよって指摘され。それでちゃんと自覚した(笑)
AS: そう。「おはよう」だとか報告し合ってんの。しかもこの間はいきなり「俺はお前らとは違うんだ」みたいなことをずっと言ったりしてね。
TH: それで、夜中の3時ぐらいに2時間ぐらい電話したね。
AS: 「もう嫌だ! こんなんじゃ」みたいな(笑)
TH: だから、もう取り留めもなく話してる。ただ、もちろん、朝吹さんの作品の話もするし、允くんの作品の話もするし、まあ服の話もする。基本的には制作に繋がる話ではあるよね。
AS: でも半分、いや、7割は愚痴だよね。くだらないことかもしれない。あとは悪口。3人ともジャンルが違うから、無責任にもなれたりしてね。
TH: うん。本当、プライベートから何から何まで話してるもんね。
AS: 今は特に、ちょうど制作が終わったタイミングだったというのもあるけど。
TH: うん。僕はちょうどタイミング的に、コレクションのサンプルが仕上がってくるのを待っているんですよ。今月末の撮影に向けてね。だからちょっと時間があったんだけど、允くんと朝吹さんはここ最近、かなり忙しかったよね。でもだいぶ、アトリエの、特に手前の方は整頓されてない?
AS: そうかな。水回りだけは、ね。これでうちが水回りがやばいと終わってるでしょ? だからその辺りだけは常に掃除をするというのは決まってて、でも作業するこっち側なんか全然しない。大体どこら辺に資料だとかがあるか知っているし、制作の期間中は特に「あっ」と思ったらすぐどこに何があるのかわかんないといけないからね。だから、終わってから一気に片付けはするんだけど、一心不乱にガーッて片付けちゃうと、どこに何があるかもわかんなくなっちゃう。だから、タイミングでね。
TH: (作品、絵、本、写真、服に囲まれる部屋を一望して)過去イチでいろいろな絵が置いてある気がする。たぶん、描き途中のものも含めて。
AS: そうかな。でも、やりたい絵があっても別の仕事が来ちゃったらそれやるしかないじゃない。それは仕事だし、制作を止める。だから、未完のものも出てくる。本当はね、基本的に四六時中つらいなって思ってる。つらいなと思うのは、やりたい絵を描いていない時間を過ごしているところもあって。全部、絵の思考になって生きてるから……そういう意味ではやっぱり絵描きなんだけど、結局、何したいんだろう(笑)
TH: 僕も結構、プライベートと仕事が一緒になったりもするし、そういうこととは違うの?
AS: 絵を描くのは昔からある職業だけど、それを今の時代に合っているように捉えて、単純に絵を描いてるわけ。言葉で言うのは簡単だけど、難しいよね(笑)。生活もオン・オフが特にないから、時折すごい悲しくなっちゃう。たとえば、映画をただ観てるのも、次に描く絵のために観ているような気持ちになったりして。
TH: 僕も好きなものは音楽と映画で、多分それ以外は普通に仕事してるんだよね。允くんと同じかわからないけど、この二つも結局、仕事に結びついちゃう。リサーチでもあるし、音楽や映画ってファッションと必ず関係があるから。
一張羅のつなぎ。
AS: この間、大使館に太郎さんのスーツを着て行ったのね。自分は「これ、すごく似合う」って思って。でも、「允くん、今日スーツじゃん」ってみんなに言われたの。それで、確かに珍しいのかと思って。いつも変な服を着てるからなんだろうけど、そういう自分の服装の中で、もしも自分の“一張羅”があるとしたら何かっていうことも話したよね。
TH: うん。LINEで、実際にこういうのあったらいいんじゃないかみたいな感じで、僕もその場で絵を描いて送ったりして。
AS: その意味では、絵を描く人として“つなぎ”はぴったりだったよね。僕のイメージは、作業着のそれが一張羅になるようなこと。基本的に、僕が賞をもらうことは一生ないんですけど(笑)
TH: いやいや(笑)
AS: でも、僕がもしも賞をもらった時に、作業の延長戦で着替えず、それを着て出ていけるような……というイメージ。
TH: ペインティングをしていて、その後そのままギャラリーのオープニングに行けばいいんじゃないの、みたいな話もしたね。
AS: 汚れちゃっていても。
TH: うん。
AS: ちゃんとフォーマルっていうのかな。
TH: ペイントがちょっとついてる感じだとしてもどこかにフォーマル感があるという一体感。でも、允くんとこのイメージの話をしていたんだけど、絶対にこれ着てペインティングしないよねみたいな話もでた。それはそれでいいなとも思って。作業するために作ったけど、単に允くんがそれを着てレセプション出ていてもかわいいし。
AS: いいよね。しかも、自分のために作ってくれたものを着れるなんて。
TH: つなぎだけでも綺麗めなニュアンスは出ると思うんだけど、この上にジャケットを着たりしてもかわいいと思う。
AS: 確かに。中にシャツを着てもいいしね。一応、オープニングの時だけはシャツ着ようとかっていつも思ってるんだよ。
TH: あとは、つなぎだからウエストで上半身を結んで、その上にジャケットを着るのもいいね。あとは、スーツの上にエプロンとか。
AS: エプロンもかわいいね。昔デビューするぐらいの時に、多分トム・フォードの「グッチ」だと思うんだけど、つなぎがたくさん出てくるコレクションがあったんだよね。しかも、全体の中の主力みたいな存在感で普通のつなぎがあったのを覚えてて。その時はじめてジャンプスーツって言うんだって知ったんだよね。今回のプロジェクトを考えるにあたって調べてみようと思ったんだけど全然、情報が出てこなかった。
TH: おそらく90年代末から2000年初頭くらいだね。
AS: そうだと思う。2000年くらいかな。『流行通信』か何かで観た気がしてね。
TH: あれはもはやスーツなんだよね。作業着の形はしているけど。
「どこも同じ」。
AS: 少し話が逸れるけどさ、この間、香港に行った時に思ったのが、たとえば日本でも香港でもすごいビルが建っていて、何か面白そうなことがあるんじゃないかと思って行ったら大体ファッションビルなの。しかも、同じラグジュアリーブランドがその隣のビルにもある。そっちにもこっちにもある……。じゃあ、何か販売しているものや内装だったりの種類が違うのかと思いきや、同じものを売ってる。正直、ファッションは全部が失速してるような気がするから、なんかあんまり興味は湧かないんだけど。
TH: 商業施設はどんなすごいところに行ったとしても、ね。
AS: 結局、今ってチョイスがないじゃん、とも思った。もし買おうとしても香港である理由はなく、日本で買えるわけだし。でも、太郎さんは“自分のもの”を持ってるよね。それってオリジナルでしょ。かえって世界展開のスケールになってしまうものは結構危ないんじゃないかとも思った。麻布台ヒルズが出来ましたって言っても、結局そこにはまた同じブランドが入るんなら。
TH: その感覚はすごくわかる。二日前に高崎に行くことがあって、市内に唯一残っている「エイプ」の店舗に行ってきたんですよ。NIGO®さんが群馬県出身だから、聖地巡礼みたいな気持ちもあったりして。実際に行ってみると、その時はお客さんが一人もいなかったけど、懐かしいTシャツがあったりして。「これ、あの時は並んでも買えなかったやつじゃん」みたいな。それと同じものが売ってた。
AS: 持ってたよね。
TH: でもよく考えたら、東京のドーバーストリートマーケットで買えるなと思って。それでドーバーに行ったら、そのTシャツに“ジャパン”って描いてある……。ドーバーが限定ものだけを扱うってことなのかもしれないけど、それは果たしてかっこいいのだろうか? という疑問は率直に出てきた。
AS: “お土産物”みたいなのが多いよね。自分たちが若かったあの当時って、東京で流行っているものが伝聞され、真似されて、どんどん広がっていく感じだった。
TH: それをインターネットが一気に変えちゃった。
AS: どの地方都市にいても買えるからね。それを贅沢というのか。
TH: ファッションはどうなるんですかね?
AS: 全体のことはわからないけど、それに関しては、太郎さんの服は“オリジナル”の方面にいってるような気がする。丈夫で、形が良くて、着やすい。それがまず前提にある。あと、僕は肌が弱くて、太郎さんも肌が弱いから、素材だとかに関しても極端なものがないじゃん。(ラックにかかった服を指しながら)この麻もすごく良いんだけど、かぶれちゃうしね。
TH: すごく大事なところだね。今日は、結構シラフだね(笑)。
AS: 昨日は1日バッドはいっちゃってたからね。自分の時間がないと思って、それを占める仕事もお金になる仕事とそうじゃないものがあるでしょう。仕事は好きなんだけどね。結構、破滅的なんですよ。
TH: でも、しっかり仕事は仕事として。
AS: うん。破滅的に仕事もするけど、破滅的に飲んじゃうしね。だから、朝吹さんも太郎さんも飲まないから、ふたりがある種ストッパーになってる。しかも本当に最近、本当に忙しかったから、朝吹さんとご飯食べる時は普段ビールを飲むけど飲まなかった。その後も仕事しないといけないから。そういうのはどんどんイライラしちゃう。
TH: 本当は飲みたいのに?
AS: 飲みたいよ。でも飲んだら仕事のパフォーマンスがめちゃくちゃ落ちるってことがわかり。でも自分ん家では俺飲まないからね。飲んだら基本、仕事しないから。意外と真面目なんだよ(笑)。
TH: そうだね(笑)。僕はお酒も飲まないし、タバコもやらないし。
AS: 俺はタバコもやるし、朝吹さんと3人でいると、俺だけすごい汚い人みたいじゃん(笑)
Artist Wardrobe Product
Apron (Artist Wardrobe / Ataru Sato) / black
¥24,200
エプロン。
(アーティストワードローブ / アタル・サトウ)ポリエステルと綿の混紡糸を高密度に織り上げた、ハリ感があり、タフなツイル素材。今シーズンより始まったアーティストワードローブシリーズ。初回はthとゆかりのある3人のアーティストとそれぞれのユニフォームを一緒に製作しました。ペインターの佐藤允氏のためにエプロンを製作しました。胸や収納力のあるフロントのポケット、動きやすさを考慮したスリットなどシンプルながらも機能的なアイテム。
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