
Artist : 上出遼平 / ディレクター
映像ディレクター。作品に『ハイパーハードボイルドグルメリポート』シリーズ、『MIDNIGHT PIZZA CLUB』、『BAD PHARMACY』、『UNCOVER』、『健康チャンネル』など。TH:よく分かります。ちなみに、取材対象として、スピリチュアル系は興味ないんですか?
RK:対象としては大いにあります。
TH:僕は読み物としてはとても好きで。事件のドキュメンタリーと同様に、人間のマインドの裏側が見れるように感じるんです。
RK:そうですね。人間の弱さが出る。ただ、その弱さで商売をしている人たちが多すぎて、ちょっと嫌にもなりますけどね。一般的に人が見ている現実が、オンリーワンの現実ではないという感覚はある。今ここでさえ、僕たちみんな見ているものが多分違うじゃないですか。だから、事実は一つですよねとは思わない。非科学もあっていいと思うし、非科学のストーリーの強さはある。ただ、かといって、それを使って金を稼いでいる人々がいて、俳優やテレビタレントもバシバシはまっちゃうんですよ。だから、僕にとっては結構分かりやすさもある。
TH:なるほど。やっぱり、人の不安の部分に入り込んでくる感じなんですか?
RK:不安もあるけど、勉強してきていないというすごくシンプルな弱点がある。ロジカルに物を考える訓練をしてないから、いわゆるスピ系のものって基本的にロジカルに基づかない“飛躍"がいろんなところにあるんですよ。気づけない。あと、理屈では通用しない世界に役者の成功があるんですよね。
TH:ああ、何故そこに辿り着いたのかわからないとか。
RK:まさに。そこには、奇跡みたいなものが常にあるし、それを得た自分は特別だっていう感覚がやっぱりある。だから30分20万円といったスピリチュアルな治療でも、特別な人間にだけ許されるものだからあなただけ受けられる、と言われたら……
TH:ちょっと納得いくのかもしれない。
RK:僕の周りで多いのは役者やタレント、他には中小企業の社長がものすごいハマります。
TH:要は成功したけれど、なんで自分が今のように成功したのか分からない人がハマりやすい、と。ロジカルに成功したことが分かっている人間はハマらない。
RK:業界の問題、違いはあると思う。僕らのようにものづくりをする人間は、まずロジックを100%突き詰めていくわけですよ。なぜこの題材を扱うのか。なぜ、こういう起承転結にするか。あるいはなぜ、そういうパッケージにするかがあった上で動く。でも、最後の最後に何らかのジャンプが必要で、そのジャンプが成功すると大きな成功になるという世界です。役者は、そうしたロジックを積み重ねる手段や機会を持てない人が多い。
TH:本人が因数分解できないほどに、外側でいろんなことが決まっていったり、行われてきたりするし。
RK:そして、突然のフックアップがある。基本的に出会いで決まっちゃうみたいな世界でもある。だから、最低限のスキルは必要ですけど、全く腕がなくてもバコンと売れることがあるわけですよ。誰かに気に入られるとか、飲み屋で誰かに会うとか、それで成功した人間にとっては積み重ねるべきロジックがないんですよ。だからでっかい数珠つけるしかなくなっちゃう。
TH:なるほど、興味深い世界ですね。
星野道夫と歩くこと。
TH:山に行くのは、幼い頃からですか?
RK:もともと西東京生まれなんで、家族と週末にどこか行こうというと、奥多摩あたりがほとんどだった。ディズニーランドに行こうとは一回もならなかったし、親が、自然の方が好きだったんでしょうね。でも当時は、山歩きよりもキャンプでした。たぶんスノーピークとかが盛り上がってきた時に親父にヒットして。
TH:もともとキャンプはしていたんですね。じゃあ、自然に行くのをしばらく辞めた時期っていうのもない?
RK:いや、中学から高校はあんまりやってなかった。大学に入ってから初めて一人で山に入るようになりましたね。星野道夫さんという、アラスカで熊に襲われて亡くなった写真家がいて、もともとは親が好きで星野さんの写真集を親父がしょっちゅう買ってきてたんですよ。
TH:若い頃から好きだったんですか?
RK:というより、もしかしたら親がそういう教育をしたかったのかもしれない、こういう方向に行けと……最後食われて死ぬけど(笑)。写真もあるけど、文章もすごく面白いんですよ。
TH:星野さんの影響は大きいと感じますか?
RK:あるとは思います。山岳部系の人の自然との向き合い方と、星野道夫的な人の向き合い方で全然違うんですよ。山岳部系はどちらかというとアルピニズム、つまり西洋の山登り文化なんですよ。誰よりも早く頂上に行く。誰も行ったことのないところへ……
TH:競技のような。
RK:そうなんです。いわば、スポーツです。その一方、星野道夫的な考え方は、“征服する相手"として自然を見ていない。自然の内にちょっとお邪魔させてもらいます、という感覚なんですよ。だから自然と動物にも近づいて行ったりする。僕は、それが原体験的にあるから、深い森を歩き続けるみたいなことをずっと続けてる部分はあるかなと。今は、歩くそのことが好きだというのもあると思います。思索的にも、脳の作用的にも、歩く行動が良く、僕にとっては瞑想にも近い。スティーブ・ジョブズは会議を歩いてやってただとか、そういう話があるぐらいですしね。
TH:とても面白いです。ヨーロッパの方はあまり行かないですか?
RK:ほぼ行ったことないです。行ってみたいんですけど。
TH:カルチャー的にはアメリカが好きなんですか?
RK:それもあるかもしれないですね。世界の歴史は詳しくないので、表層的なものが好きだとアメリカ好きじゃないですか。本当に歴史を学んだら絶対ヨーロッパがいいと思いますけど。あとはやっぱ山が……自然が多いんで。
TH:確かにそうですよね。ヨーロッパは比較的平坦だから。
RK:そうですね。イギリスも面白そうだから、一度は行ってみたい。穏やかな山の中を走るレースとか有名なんですよ。
移動する人間の装備。
TH:今回のプロジェクトは、個々の職業、仕事によって見えてくる服装に焦点があるのだけど、上出さんの場合……
RK:難しいですね(笑)。小説家の方だとどういう服になったんですか?
TH:基本的には、これまでの人もそうなんですけど、日常的な生活のための服というよりは、それぞれに専門性がある作業があるじゃないですか。建築だったら現場で何かをする、ペインターだったら絵を描くだとか。その作業をする時に着る服というところへの焦点が、今までは多かった。小説家の場合は、家にこもることが多く、ある程度、自分らしくリラックスして書けるような服を一緒に考えていった。素材だとかを決め、パジャマのようだけれど、ディテールやシルエットは違う、というものになっていきました。音楽家の場合は、フィールドレコーディングする時に外のちっちゃな音を録音するため、邪魔な音が発生しにくい合繊の加工をして、尚且つ、雨などの天候に適応してコートの丈を変えられたり。それに加えて、インスタレーションで使うものを集めて持ち帰りやすいようにコートの丈を短くすると同時にポケットのようになる仕様になっていたり。つまり“職業"に寄り添った考え方を服にも落とし込む。でも、上出さんを“職業"として捉えると……
RK:いや、マジで分かんないです(笑)。でも、例えば、ポッドキャストにしても“ここじゃないどっか"に行って録ってくるわけですよ。だから僕は、とにかく“移動している人間"であることは間違いない。文章を書くにしても、絶対に移動し、何かを見て聞いて知ってから書く。取材に類することが表現のベースにはなっていると思うんですよね。
TH:なるほど。移動と取材。
RK:そういう意味では職業人として本当に何が必要かというと、取材の時の、汚らしくなく、シワにならず、動きやすく、でもいろんなレコーダーを入れたり、あとは目立ちづらい形で収録が進められるポケットが欲しいんですけど。
TH:iPhoneを入れるポケットになぜか穴が開いていて……とか?
RK:マジックミラー号みたいなポケット(笑)。
TH:それを本気で一緒に作って、もし犯罪に使われて訴えられたら困りますね(笑)
RK:(笑)。音が録れればいいんですよね。でも、レコーダーによってサイズが全然違う。自分の声を記録ように録ることが多いので、ピンマイクを表からは見えないように上手く裏側でつけられるようになったりするのもいいですね。
TH:普段、具体的にはどういう服を着ていますか?
RK:こういう風に考えると、僕は最近の取材ではARC'TERYXの化繊のシャツはよく使っていて、それは、よく伸びるし、シワにもならないから。ポリウレタンが相当入ってると思いますけど、汚らしくはない。取材の時は、ほぼ全身黒か全身グレーですね。
TH:色も統一しているんですね。
RK:パンツはアメリカの軍隊のトレーニング用のダボっとしたものも多い。他は、TIGHTBOOTHというスケーターのブランドのパンツは、ポケットが沢山あるから良い。ただ、あまりにもブカッとしてボンタンみたいな印象が出てきちゃうと、地方に行ったときに怖い人が来たんじゃないかと警戒されちゃうこともあるんですよ。それは避けたい。
TH:取材がしづらくなるのか。視覚的な第一印象の面もあると。
RK:そうですね。どうしても大きめな服は怖くなっちゃう。靴も、最近は難しいと感じている。
TH:急に雨が降ってきたりしても、取材が必要な時もありそうですもんね。今は何履いてるんですか?
RK:今は全然都会仕様で、Timberlandのデッキシューズ。
TH:例えば、一緒にシャツを作るというのはありえますか?
RK:はい、もちろん。綺麗に見えた方がいい場面が取材の時には多々あります。
TH:やっぱり皆さん、それぞれ大切にしているポイントが違うから面白い。
RK:僕はだいぶ状況は特殊ですけどね。本当にいろんなことをやっちゃってるんで。ファッションのパーティーと殺人事件の取材、そして山登り……TPOとしては、あまりにもかけ離れている。今回、ニューヨークから日本に来る時に、それぞれ用の靴と服を持ってこなきゃいけないので超大変なんですよ(笑)
TH:それぞれの環境に馴染まなきゃいけない。
RK:そうですね。特殊な場面では、なるべく目立たないように。
TH:怪しく見えてもいけないし、キャラが強くなってもダメだし。アノニマスになる、という感覚がある?
RK:どちらかというと、そこに溶け込みたい。溶け込んでいたいし、同時に、快適でもいたい。
TH:なるほど。つなぎとかは?
RK:どうでしょう。つなぎで殺人事件の取材をしたら、あまりに目立ってしまう。
TH:なるほどね……怪しくも見えちゃうのか。ちなみに、山に行く時の帽子は、山用の帽子なんですか?
RK:(持参していたものをさして)こんなのでも行けますよ。これはコットンですね。一時期、僕も選択するものが原理主義的になりましたけど、今はだいぶそこからは移行している。靴と靴下だけはちゃんとしなきゃ、だとかはあるんですけどね。
TH:熱を奪われたり、コットンの良くないところもありますよね。
RK:そうです。吸水性も高すぎるし……
TH:乾燥しない。
RK:まさに。乾かないので、濡れた時の保温性が著しく落ちる。ウールは濡れても温かい。繊維自体の違いがあるし、質量の問題もある。強度は高いんですけど。
TH:今被っている帽子は完全に100%コットン?
RK:そうですね。
TH:本当はナイロンだとか、防水性がある方が山の時とかも良いんでしょうね?
RK:防水性に関しては諸説ありますね。例えば、ゴアテックスだとか、その類の生地はどうしても蒸れる。頭ってすごい放熱と発汗しているから、そういう意味では、限りなく乾きやすい生地の方がむしろ合理的だとさえ思います。濡れることが前提で、濡れてもすぐ乾く。あるいはウールとか。季節によりますが、冬はやっぱウールのニットが一番ですね。
TH:なるほど。職業から汲み取るよりも、自然との向き合い方を含めた山登り、取材でのユーティリティ、そして素材の選択が重要になりそうですね。良い話が聞けました。ありがとうございました。
Artist Wardrobe Product
Utility Tailored Jacket ARTIST WARDROBE / RYOHEI KAMIDE / black
¥74,800
ユーティリティテーラードジャケット アーティストワードローブ / リョウヘイ・カミデ
3回目のアーティストワードローブシリーズ。今回はthとゆかりのある2人のアーティストとそれぞれのユニフォームを一緒に製作しました。
今回は、2019年に『ハイパーハードボイルドグルメリポート』でギャラクシー賞を受賞した、テレビプロデューサーの上出遼平氏との共作。
上出氏が旅路で出会った過酷な環境下で見出した美学をディテールに反映しています。
旅先でサバイブする為の、予測不能な現場で必要とされる、耐久性と機能性を持ち合わせたアイテムとなっております。
フロントポケットだけでなく、背面にゲームポケットを配置しました。撮影中に不要になったレンズキャップ、予備のバッテリーなどを収納も可能。
「食」と「生」を記録してきた上出氏ならではの、飾るための服ではなく、生きるための「装備」となっております。
表面の独特なシワ感はナイロン糸とポリウレタン糸の縮率差により表現しています。
ポリウレタン高混率により、薄くて軽いうえに独特の弾力がある素材です。
また、後加工として撥水加工を施しておりますので、多少の雨であれば水を弾く事が出来ます。
Utility Cargo Pants ARTIST WARDROBE / RYOHEI KAMIDE / black
¥64,900
ユーティリティカーゴパンツ / リョウヘイ・カミデ
3回目のアーティストワードローブシリーズ。今回はthとゆかりのある2人のアーティストとそれぞれのユニフォームを一緒に製作しました。
今回は、2019年に『ハイパーハードボイルドグルメリポート』でギャラクシー賞を受賞した、テレビプロデューサーの上出遼平氏との共作。
上出氏が旅路で出会った過酷な環境下で見出した美学をディテールに反映しています。
旅先でサバイブする為の、予測不能な現場で必要とされる、耐久性と機能性を持ち合わせたアイテムとなっております。
パンツの腰部分には、「巾着ポケット」を配置。 ロケ中の激しい動きでも、中に入れた携帯やワイヤレスイヤホンが飛び出す心配はありません。
「食」と「生」を記録してきた上出氏ならではの、飾るための服ではなく、生きるための「装備」となっております
表面の独特なシワ感はナイロン糸とポリウレタン糸の縮率差により表現しています。
ポリウレタン高混率により、薄くて軽いうえに独特の弾力がある素材です。
また、後加工として撥水加工を施しておりますので、多少の雨であれば水を弾く事が出来ます。
本商品の取扱店舗
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その他の取扱店はStockistより各店舗にお尋ねいただくか、カスタマーサポートまでメールにてお問い合わせください。




















